ねんきんあんしんダイヤルで起こっているかもしれないこと

妄想、妄想。

記録照合が目的のセンターなのに記録照合ができない

社保庁は13日、フリーダイヤルと従来ある電話年金相談に同日朝までの24時間にかかってきた電話相談の着信が39万8912件で、実際に応対できたのは1万6480件だったと発表した。前日の着信47万件からは減ったものの、電話しても大半がつながらない状態が続いている。

-中略-

1件の電話対応に30〜40分かかるため、1日に処理できるのは1人20件が限界。「質も量も不十分な状態で、まともに相談にのれるはずがない」と話す。記録確認では10件中数件に入力ミスが見つかるともいう。「社保庁がやってきたことはいい加減なことばかりだ」

記録照合が主な問い合わせなのはずなのに、1件の電話対応に30〜40分かかっている。通常コールセンターで顧客情報を検索するケースを考えても、顧客情報が的確にデジタルデータ化されていればその検索は長くても数分で終わると想像できる。それに種々の説明を加えても平均30分以上かかるという状況は想像しがたい。しかし、次の記述からそもそも記録照合のシステムができていないことがわかる。

やっと電話がつながったと思ったら、年金記録の相談に応じるのは素人の派遣社員ーー。社会保険庁は、記録確認のフリーダイヤルに殺到する電話に対応しようと、数時間の研修で「促成栽培」した派遣社員をオペレーター要員として送り出している。しかしコンピューターの端末不足もあって記録確認はできず、電話口でひたすら謝るだけで、当の派遣社員も困惑気味だ。利用者の不満は収まりそうにない。

-中略-

だが、急な要請に応じたオペレーターは予定の半分程度。しかも、着信が横浜市にある業者のコールセンターに回された場合、年金記録にアクセスできるコンピューター端末が手元にないため、肝心の記録確認はできない。電話に出てもひたすら「申し訳ありませんが、何日後かにおかけ直しください」とお願いするのが主な仕事だ。

記録照合用のセンターに関わらず記録照合できる体制にないのが、このパニックの主要因。

受電しても記録照合ができないから対応時間が無為に伸びる。伸びた対応時間は待ち呼の待ち時間につながる。待ち時間が延びれば放棄呼が増える。放棄呼は再度受電するから呼数がさらに増える。つまり放棄呼が増えると分母になる全体の呼数が増えるので、対応時間が延びた場合はそれ以上に応答率が悪くなる。

対応時間が長くなると、対応そのものへの苦情が増えてさらに対応時間が延びる。記録照合が目的で電話をかけて記録照合ができないならなんのコールセンターかと苦情を言われる。苦情対応がオペレータで対応できなければSV・リーダーが対応を替わる。SV・リーダーが電話対応に取られればオペレータの対応相談を受けられる人間が減って、これもまた対応時間が延びる。

SV・リーダーがSV・リーダーとして機能しない

苦情対応の増加によりSV・リーダーが直接電話対応を行うようになると、SV・リーダーがオペレータを指導する時間が無くなる。ここでいう指導とはオペレータに直接声がけするようなことだけでなく、モニタリング・トークスクリプトの作成・改修まで含む。指導なしで各オペレータの対応時間を短くするには限界がある。

専任でそれをするSV・リーダーを用意すればいいだけのことであるが、応答率が悪くなり・苦情対応が増加すると焼け石に水でしかないのに少しでも多くのスタッフを電話対応に当たらせようとする。結局、センターを統括する人間がいなくなり、皆で目の前で鳴っている電話をとっているだけの状態になる。

「少しでも応答率をあげてくれ!」by クライアント

悲惨な応答率を見て、無為に悲鳴をあげるのはクライアント。自民党の議員が杉並のセンターを見学して奇声をあげたらしいが、それを受けた社保庁が各センターへ「とにかく稼働率、応答率を上げろ!」と号令をかけることは容易に想像できる。

号令を受けたセンターは、仕組みで応答時間を短くすることができないから、稼働率オペレータの人数をあげるしかない。スタッフの数が決まった中で稼働率オペレータの人数を上げるにはどうするか。残業のお願い、休日出勤のお願い。このご時世、せっかく見つけた仕事を放棄することはできないから、スタッフは応じる。まともな対応ができない状況と数多い苦情で普段からスタッフにはストレスがたまっているのに、勤務時間の増加でさらに増大していく。そして体調を崩し欠勤率の増加、結局稼働率オペレータの人数は変わらない。

増員しても実際は増員されてない

仕組みで対応できなくなったセンターは人員増加で対応する。しかし、増加した人員を指導する仕組みはない。コスト増加を防ごうとSV・リーダーの増員はオペレータに比べて少ない。SV・リーダー1人あたりの負荷はさらに増大。見渡せばただ応答しているだけのオペレータが見えるだけ。オペレータの対応相談が一つ終われば、息つく暇もなく次の対応相談がやってくる。さらには苦情対応、SV・リーダーもストレス増大、欠勤率増加。SV・リーダーの欠勤率増加はオペレータのそれより影響が大きい。オペレータが対応に困っても相談する人間がいない、ストレス増大。みんなで体調崩してフラフラ、欠勤が多くて増員した数ほど稼働率オペレータの人数があがらない。

結局、対応時間も稼働率オペレータの人数もよくなってないからコストをかけたほど応答率もよくならない。

センターを覗くと意外と平穏

どんなにひどい状態でも慣れというのはこわいもので、日を重ねるとその状況に慣れる。オペレータは苦情対応もパターン化したトークでやりすごせるようになるし、SV・リーダーもひたすら個別の対応処理に追われているからあまり何も言われなくなる。現状で身につけた対応を静かに日々続けていけばいい、そうやって日々をやり過ごすオペレータも出てくる。なにやら苦情処理やってるんだろうなというオペレータの対応も聞こえるけど、全体で見ると意外に平穏だったりする。

それでも見えないところで確実にあるのは大量の待ち呼。

気がつけば呼数も落ち着き気がつけば業務終了

記録照合は1度対応が終われば、再度問い合わせがあるものではない。国民の数は有限だから最終的に呼数は減っていく。センターはひたすら電話に出ていた結果、問題が解決したように感じる。完全に呼数が落ち着いたところでねんきんあんしんダイヤルは終了。余剰人員は業務終了となる。

これにて一時のパニックは何だったかのようにねんきんダイヤルはごく普通の年金相談窓口に戻る。


稼働率」の言葉の使い方間違えた、ぎゃあ。