自分の思ったとおりの人材が集まらないのは、自分が思っていることを伝えないから。

リクルートの求人広告部門で働いていた筆者が、自社についての詳細を自社Webサイトで説明し求職者とのミスマッチを防ぎながら欲しい人材だけが集まるようにしましょう、と説いていく。

序文で、事業内容への理解や応募動機のない人事担当者の愚痴と募集の内容と実際の状況が違うという求職者の話を対にして紹介し、第1章で採用の質は自社の「価値観」を共有できることが最大条件だと述べる。自社の「価値観」は「組織文化」と「事業目的と企業理念」の二つとしているが、要は会社が実際に何をしているかということに対して求職者側に共感を得てもらえるかどうかが大事ということだろう。

そうした採用側と求職側の「価値観」のズレを「採用のミスマッチ」として扱い、なぜそれが起こるのかを説明する。それを要約すると、求人広告雑誌や求人Webサイトでは定型のフォーマットしか扱えない。そこにのせられる情報は限られてしまうので企業の「価値観」をのせる隙間はない、ということ。情報量を増やそうとして掲載スペースを大きくしようとすれば掲載料が高くなってしまうことも指摘している。

そこで、自社Webサイトを使用すれば制作費だけで企業の「価値観」を打ち出すことができ、「採用のミスマッチ」を防ぎながら欲しい人材を獲得することができますよ、というのが本書の主張。

方法論でのポイントは次のようなことが記されている。

  • 求人広告をみた求職者は求人広告の情報だけでは足りずその会社のWebサイトを訪問している。それ以外に採用情報専用の検索エンジンがある。まずは自社Webサイトの存在を認識してもらうことからマーケティングする。
  • Webサイトには「会社内容」「職場環境」「仕事内容・勤務条件」を細かに記していく。
  • Webサイトは定期的に更新することにより求職側に常に新しい情報が記されていることをアピールする。
  • 専門的スキルを持つなど集まりにくい人材については、常時募集をかけておく。
  • Webサイトからの応募には即答性が求められるから、応募があった場合は素早く応答する。

採用Webサイトに何を記すかが一番のポイントだろうが、実例としては日常の会社の様子や社員インタビューといった内容があげられている。


採用に関する戦略論としては概ね納得できるのだけれど「自社の様子をどれだけ嘘なしで書けるか」ということがポイントになるのだろうな。たとえば、サービス残業あたりまえ・従業員は毎日死んだような顔をしてます、みたいなブラックな状況になっている企業がどんなに飾った内容の自社Webサイトを構築しても、結局それを見た求職者とはミスマッチが発生するだろう。この方法をとるには採用戦略の前にまずはまともな経営戦略が必要になる。

それと、網を放ってじーっと待つタイプの戦略なので素早く数を求める採用には向かないだろうということ。たとえばコールセンターのスタッフ、ぎゃー。とはいえ、常時コストなしで求人情報が掲載できるという利点を生かせば、やり方次第でどうにかなるという気もする。

要は嘘をつくなってことですよ。「未経験者歓迎、研修充実、誰にでもできる仕事です。」みたいなしょうもない嘘を。

欲しい社員を無駄なコストゼロで採る方法

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