議事録は誰のために書くのか。それは会議に参加していない人のため。

今の仕事で「会議の議事録です」といってあがってくる文書を見ると、決定事項だけを書いた文書が上がってくる。

  • 事案1についてはAさんが今週中に処理。
  • 事案2は事案1が解決しなければ対処できないので保留。

と、こんな箇条書きの羅列。

こういう議事録は短時間で書き上がるので書く方は楽だが「会議の参加者以外にどういった意図・経緯でその決定がされたのかがわからない」という弊害があると思ってる。

たとえば事項1をAさんが処理すると決定した経緯の中では、事項1の処理を今週中に処理するには懸念材料があるということをAさんが主張したかもしれない。事項1は全員が反対したにも関わらず上役の強引な押しで決定したものかもしれない。だが、こういった背景情報を抜きにしてAさんが今週中に処理するということだけを抜き出すとそれがうまくいかなかった場合にAさんだけに責任があるように見られる。しかし、Aさんが懸念点を表明したり全員の反対があったりしたことを記しておけば、その決定をしたAさん以外の人間にも責任があることがわかる。逆に、会議の参加者全員が反対したのにAさんだけが進んで処理を承った場合は、それが経緯として記されていないとAさん以外の参加者の責任が実際より大きく見えてしまうこともある。

その影響が会議の参加者だけにしか及ばないなら再度会議をやってくれればいいだけだが、たいていの場合は会議の結果は関連部署全員に及ぶ。各部署の会議参加者がそれを落とし込めばいいんだと言われるが、会議参加者が各人にそれをする手間を考えたら議事録のほうが効率がいい。だいたい記録に残していないと各部署で話す内容がバラバラになるのが常だ。

議事録は会議参加者のためではなく、会議に参加していない人間のために書く。議事録をみた人間から「これはどうしてこういう決定になったんだ」と突っ込まれたことはないか。だったら、議事録にはじめから経緯を明確に書いておく。誰のどういった発言によってその結論に至ったのかを明確にするべきだ。それは会議に参加していない人間からも決定事項に対して責任を負った会議参加者へ目を光らせてもらうことになる。

会議の経緯まで含めて箇条書きできるならそれでもかまわないと思うが、それよりも各人の発言をひとつひとつ書き起こしていったほうが会議に参加していない人間にも明確に会議の流れがわかり手っ取り早い。だからはてなのように音声ファイルを誰でもあとで聞ける状態にしておいて、それに決定事項のメモをくっつけておくのがベストの議事録だと思っている。*1

現在の環境では音声ファイルを保存・再生できる環境がない。しかたないので僕が参加するクライアントとの定例ミーティングについて、議事録担当者に「雑談を除いて発言をすべて書き起こせ」と指示したことがある。週1で毎回2時間のミーティングだが、議事録担当者には半日かけて議事録を書いてもらった。

その議事録は会議に参加していない人間に好評で「どういう経緯で決定したかがわかるし、その決定に各人がどういう姿勢でいるかがはっきりわかる」と言われるようになった。おかげで、こちらもミーティングの内容について細かく説明する必要がなくなった。

現在、似たような定例のミーティングをクライアントと週1で毎回1時間でやっているが、僕が1時間半程度かけて議事録を書いている。この時間はあとで会議に参加していない人間に会議の内容を伝える時間を考えたらたいした時間じゃない。それともうひとつ大きいのはこうやって経緯を書き起こす作業が、改めて会議の内容を整理することになり次の会議への対策にもなるということだ。

ミーティングが終わると、書記である人が議事録を書き、それを出席者全員に送る。議事録には必ず「もしこの議事録に変更箇所がある場合、書記のXXXXまでにX月X日までに連絡すること。それが無い場合、この議事録はこの通りのまま記録されます」。というDisclaimerが付く。だから、議事録が送られてくると出席者である私は何時間もかけて手直しをして送り返してやる。自分の立場について不利なことを書かれている箇所は全部直す。

*1:会議の内容を音声で公開するのは、聞かれているという緊張感から無駄な雑談が減るという効果もあると思う。