ある種のクレームは言うだけ無駄。相手は聞く気もないだろうしあなたの時間がもったいない。

とあるコールセンターは、インバウンドでは広告を見た客の注文を受けアウトバウンドでは既存顧客のリストにしたがってアップセルやクロスセルを行う、典型的なセールスセンター。

そのセンターは複数の会社に業務委託されている大規模なセンターだが、大規模ということはそれだけの人数が必要ということになる。コールセンターのコストはほとんどが人件費であるから、人員1人あたりのコストを抑えることによって総コストを抑えるという施策がとられる。つまりはその多くがアルバイトということだ。

ところでそのクライアントの商品は似たような商品でも複雑なラインアップとなっており、ちょっとした勘違いで誤案内が発生することが多く購入した商品がユーザの目的にそぐわないという状況が発生する。

アルバイトのような短期雇用であれば人員の入れ替えは激しくなり、商品知識を得たと同時に退職ということも多い。結局、センター全体の知識レベルは向上せず、誤案内によるクレームとそれに対する管理者の対応は定量的に発生する。

このクライアントが委託先に提示する指示・要望というのはどういったものがあるのか。管理者に聞いてみると売上げの話しかされないという。クレームの量や内容・ユーザ要望といった顧客満足度につながるような指標についてはいっさいふれられない。委託先に支払われる金額も売上げによるインセンティブがあり、スタッフに対しても個人個人の売上げによってインセンティブの支払いがある。

結果的にセンターの性質は売ったもの勝ちになる。ユーザに丁寧に対応しても売上げにつながらなければ評価されないからだ。見込みがなければ早々に電話を切って次のユーザと対応する。誤案内などでクレームになった場合は謝罪と返金ですませばいいのだ。多くのクレームユーザはその姿勢に対しても不満を持つのだが、長くかかわっても何かが変わるわけではないのでクローズしてしまう。だから、売上げとクレーム対応コストが一定の基準になるならば質よりも量をこなす方針になる。

商品力のおかげもあり、このクライアントは売上げ・利益ともに一定水準を維持している。数をこなせば十分な成績になるという営業の方法は商品力があれば確かに有効なのだろう。そういう対応でよいのかとクレームユーザが思っても、クレームを言わずに商品を使用するユーザが多い限り変わらない。

以上、うちの会社のとあるクライアントについて聞いた話をベースに脚色を加えて書き上げたけど、こういう性質を持つセンターはそこだけじゃないだろう。とはいえ、ユーザに対する誠意を感じない企業の代わりに謝罪するのは堪えられないので、こんなクライアントには関わりたくないというのが僕の本音。