傍観者としての思い出。

小学校の同級生にいじめにあっている女の子がいた。

性格的には大人しくてルックスも地味な子だったが、いじめられていた理由はわからない。ばい菌扱いされ避けられたり、普通は訓読みする姓をわざわざ音読みして彼女の名前を呼ぶことを忌んだりと、特に男子からそんな接し方をされていた。

彼女とは4年生のときだけ一緒のクラスになった。僕自身も同級生と仲良くってタイプでもないので彼女とは普通に接していたが、自分が対象になるのも嫌なので彼らの行動を身を挺して止めるようなことはしなかった。

一時だけ彼女の隣の席になった時期がある。その時のクラスは担任によって男女3人ずつで班決めされて、班のメンバーで好きに座席を決めるという方法をとっていた。彼女と一緒の班に僕は割り当てられたが、案の定他の男子連中は彼女を避ける。僕は面倒なので何事も言わず彼女の隣の席を了承した。その時期だけは家が同じ方向だったので彼女と帰ることも多かった。何を話したかは全然覚えていない。ただ、いじめのことを話すだけの気概は僕にはなかった。

彼女との話で最も恥ずかしい記憶として残ってるのは、彼女の隣の席だったその時期のこと。その彼女と僕がたまたま彼女に対するいじめ行為が担任に見つかったときのことだ。担任はそれを受けてある時限の始めにクラス全員に向けて説教を始めた。説教がある程度すすんだ頃、彼女が涙を流し始めた。隣にいた僕は持っていたハンカチで彼女の涙を拭った。

説教が終わったあと同級生の女子の間の話し声が聞こえた。「k2lowって優しいね」と。その瞬間に僕はとても恥ずかしい気持ちになった。本当に僕がすべきことは彼女が涙を流す前に彼女に対する行為を止めさせることだということを理解していたからだ。彼女の涙を拭ったのだって、それをわかってて自分だけよく見られようとしたに過ぎない。その自分の思惑通りの声を聞いた瞬間、僕は強い恥を感じた。

だからといって、僕には彼女のためとそして自分自身の何かを満足させるために何かをする勇気はなかったし、その後も彼女に対する行為を止めようとする努力も何もしなかった。

その後も彼女に対する僕、そして同級生の接し方は変わらなかったけれど、それに対して教師側で何かをしたという話も聞かない。結局、僕から見えた教師の行動はクラスで1回説教をしたことのみだ。

彼女と一緒のクラスだったのは小学校4年の1年だけ。その後、隣の教室にいるにも関わらず話をすることも無くなったしほとんど関わらなくなった。中学校は私立に入学したようだがその後のことは知らない。

他にもいじめの話は思い出すけれども、学校のいじめと聞いて真っ先に思い出すのは彼女のことだ。